営業職を辞めたいと思った瞬間と、それでも続けた理由
2026-04-08 公開
「もう無理だ」と思った日のことを、今でも覚えている。
訪問営業をしていたある冬の夜、1日250件訪問して成約ゼロだった。玄関先で怒鳴られたのが3件。足は棒のようで、終電ギリギリの電車の中でひとり、「なんでこんなことをしているんだろう」と思った。
吊革を掴みながら窓の外を眺めていると、自分がひどく惨めな気がした。周りの乗客が普通に疲れて帰宅しているように見えて、「なぜ自分だけこんなに消耗しているのか」と悲しくなった。
でも私は辞めなかった。そして今、その判断は正しかったと思っている。なぜ続けたのか、正直に話す。
「辞めたい」と思った3つの瞬間
瞬間① 成果が出ない時期が続いたとき
どんな営業でも、スランプはある。私も入社して数ヶ月、全く数字が出ない時期があった。周りは成果を出しているのに、自分だけ置いていかれる感覚。毎朝、会社に行くのが憂鬱だった。
朝礼で「昨日の数字」を発表する時間があって、毎日それが苦痛だった。ゼロを読み上げるたびに、目の前の先輩や上司の目線が痛かった。「また今日もダメだった自分」が積み重なっていくと、自己嫌悪が止まらなくなる。
「自分は営業に向いていないんじゃないか」という疑念が頭の中でぐるぐると回り続けた時期が、確かにあった。
瞬間② 理不尽なクレームを受けたとき
木材商社時代、商品の品質クレームで顧客から激しく怒鳴られたことがある。自分のミスではなかったが、それでも頭を下げ続けた。「なぜ私がここまで言われなければならないのか」と、本気で辞めようと思った。
電話越しに「お前のところの商品のせいで工期が遅れた。責任を取れ」と怒鳴られ続けた30分間は、今でも記憶に鮮明に残っている。電話を切った後、しばらく席に座ったまま動けなかった。
「これが営業の仕事なのか」という虚無感と、「自分がやったわけでもないのに」という怒りが混ざった感情は、なんと表現していいかわからなかった。
瞬間③ 成果が評価されないと感じたとき
努力して数字を出しても、評価基準が曖昧で報われないと感じた時期があった。「こんなに頑張っているのに、なぜ?」という怒りと徒労感は、モチベーションを根底から削る。
ある月、自分としてはベストに近い成果を出した。でも査定では「期待に届かなかった」という評価が下された。何がどう足りなかったのかの説明も、ほとんどなかった。
「評価基準が不透明な会社では頑張っても意味がない」と思い始めたのは、この頃だ。
それでも続けた理由
理由① 「辞める理由」が感情的だと気づいたから
辞めたいと思ったとき、私は一度冷静になって「なぜ辞めたいのか」を紙に書き出した。すると、ほとんどが「今の状況が辛い」という感情的な理由だった。
「辛いから辞める」は、次の会社でも同じ壁にぶつかったとき同じ選択をすることになる。辛さの「原因」が解決できるものかどうかを考えることが大事だと気づいた。
書き出してみると気づくことがある。「辛い」と一言で片付けていたものが、実は「上司との相性が悪い」「商材に納得できない」「評価基準が見えない」などに分解できる。そこまで分解できると、「じゃあこれは解決できるのか、それとも環境を変えるしかないのか」を冷静に判断できるようになる。
理由② 成長を実感できていたから
どれだけ辛くても、「先月よりうまくなっている」という感覚があれば続けられる。私の場合、断られる回数が減り、トークのパターンが増え、少しずつ手応えを感じていた。成長を感じられる環境なら、辛さに耐える価値がある。
最初は10件に1件も話を聞いてもらえなかったのが、3件に1件になった。断られ方が変わってきた、とも言える。「忙しい」「興味ない」と即座に門前払いだったのが、「今日は時間がないけど来週なら」という言葉が増えてきた。その変化を感じたとき、「やっぱり自分は成長しているんだ」という確信が持てた。
成長の実感は、モチベーションの燃料だ。この燃料がある限り、エンジンは止まらない。
理由③ 「逃げる転職」と「攻める転職」は全然違うと知っていたから
辛いから逃げるための転職は、ほぼ確実に後悔する。次の会社でも、また辛いことが起きたとき同じように逃げることになる。転職するなら「より良い環境を掴みに行く」という前向きな理由であるべきだと、自分に言い聞かせた。
私は4回転職しているが、「逃げ」の感覚が強かった転職は、確かに後悔が残った。一方で「次のステージに進む」という感覚で動いた転職は、入社後も前向きに取り組めた。転職の「動機の質」が、入社後の充実感に直結する。
「辞めていい」ケースと「続けるべき」ケース
| 辞めていいケース | 続けるべきケース |
|---|---|
| 心身の健康が壊れている | 一時的なスランプで成長は感じている |
| 評価基準が完全に不透明 | 辛さの原因が明確で改善できる |
| 会社・上司への不信感が根深い | 感情的になっているだけで冷静になれば続けられる |
| 営業スタイルが自分と根本的に合わない | 環境は悪くないが一時的にしんどい |
「辞めたい」感情と向き合う具体的な方法
方法① 「今日だけ続ける」に縮小する
「これからも続けられるか」という問いは重すぎる。代わりに「今日だけ続けられるか」と問いを小さくする。それだけで、気持ちが楽になることがある。
1日をクリアする、を繰り返していたら、ある日気づいたら1ヶ月が過ぎていた。そういう経験が私にもある。
方法② 信頼できる先輩に正直に話す
「辛い」と言えない文化の会社もあるが、もし信頼できる先輩がいれば話してみることを勧める。「自分も同じ時期があった」という話を聞くだけで、気持ちが軽くなることがある。
私も、辛い時期に先輩から「最初の1年は誰でもそうだ」と言ってもらえて救われた経験がある。
方法③ 転職活動を「情報収集」として始める
今すぐ転職するかどうかは別として、転職エージェントに登録して情報を集めるだけでも気持ちが変わることがある。「他にも選択肢がある」という感覚が持てると、今の会社に「しがみついている」感覚から「選んでいる」感覚に変わる。
それだけでも、毎日の気持ちの重さが少し変わる。
まとめ
営業が辛いのは、あなたが弱いからじゃない。営業はそもそも、辛い仕事だ。
怒鳴られ、無視され、数字が出ない。それは営業をやっている人間なら誰でも通る道だ。
ただ一つ、聞いてほしいことがある。「辛さの中に成長があるかどうか」。この一点だけで、続けるか辞めるかを判断してほしい。成長を感じられる環境なら、今の辛さには意味がある。感じられないなら、環境を変える理由になる。
「辞めるべきか続けるべきか迷っている」という状態なら、転職エージェントに話を聞いてもらうことをすすめる。自分の外から見た意見は、思いのほか整理になる。
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※本記事は筆者の実体験をもとに作成しています。会社名・個人名・特定できる情報はすべて匿名化しています。
