営業マンの転職図鑑
イベント会社の営業に転職してわかった、他業種では学べない「体験を売る」営業の本質
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イベント会社の営業に転職してわかった、他業種では学べない「体験を売る」営業の本質

2026-04-26 公開

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4回転職した元営業マン。専門商社・電機メーカー・営業代行・塾・イベント会社で営業を経験。 失敗と成功を繰り返しながら気づいたことを包み隠さず書いています。

「この商品、いくらですか?」という質問が通用しない営業がある。

イベント会社の営業がそれだ。提案するのは「体験」であり「感動」であり「記憶」だ。価格表はあっても、価値は数字では測れない。

木材・電機・営業代行・教育と渡り歩いてきた私が、最も「営業の本質」を突きつけられたのがイベント会社での経験だった。


なぜ教育業界からイベント会社に転職したのか

教育系の会社での仕事は充実していた。保護者との面談で「子どもが変わりました」と言ってもらえる瞬間のやりがいは、他の業種では得られないものだった。

でも、あるとき限界を感じた。教育サービスは「商品の型」がほぼ決まっていた。カリキュラムは本部が決め、営業の役割は「この商品をこの価格でいかに売るか」に集約されていた。

「自分が一から提案を作って売る経験がしたい」という欲求が膨らんだ。また、教育業界は少子化の影響を直に受ける業界で、長期的な市場縮小が見えていた。キャリアとして別の業界に軸足を作りたいという現実的な判断もあった。

そこで出会ったのがイベント会社だ。「企画から運営まで、毎回一からゼロで作る」という仕事の特性が、私が求めていたものと一致した。


イベント会社の営業の仕事内容

イベント会社の営業は、大きく2つの動きに分かれる。

① 新規開拓営業

企業の周年行事・社員総会・展示会・プロモーションイベントなどの企画・運営を受注するために、法人顧客に営業をかける。「今期、何か社内イベントを考えていますか?」という切り口から入ることが多い。

最初はこの切り口が難しかった。「今期、イベントを考えていますか?」と聞いても、「特にないです」で終わる。どの法人も「毎年やること」は決まっていて、それを崩すのが難しい。既存のイベント会社と長年の付き合いがある場合は特にそうだ。

突破口になったのは「現状への不満を聞くこと」だった。「今のイベント会社に何か不満はないですか?」という問いかけで、「毎年同じで代り映えがしない」「コストが高い割に感動がない」という本音が出てくる。そこから提案が始まった。

② 提案営業・企画営業

既存顧客や見込み顧客に対して、オリジナルのイベント企画を提案する。単なる「場所と人員の手配」ではなく、「このイベントでお客様に何を感じてもらいたいか」というコンセプトから作り上げる。


他業種と決定的に違う3つのこと

違い① 「完成品」がない状態で売る

木材や電機は、実物を見せながら売ることができる。でもイベントは、開催するまで「完成品」が存在しない。企画書と言葉だけで、顧客に「このイベントは絶対に成功する」と信じてもらう必要がある。

これは営業力の純度が問われる仕事だ。数字やスペックではなく、「あなたたちに任せたい」という信頼を買ってもらう営業。

初めて大口の提案をしたとき、担当者から「前のイベント会社も素晴らしい企画書を持ってきた。でも当日がひどかった」と言われた。「企画書は信用できない」という不信感を持った顧客に、言葉だけで信頼を取り戻す必要があった。

そのとき私がやったのは、過去に自分たちが手がけたイベントの「当日の映像」を持っていくことだった。企画書ではなく、実際の空気感を見てもらう。「百聞は一見に如かず」で、映像を見た後に担当者の表情が変わった。

違い② 提案の「オーダーメイド度」が高い

既製品を売る営業と違い、イベントの提案は毎回ゼロから作る。顧客の業種・社風・目的・予算・参加人数によって、提案内容が全く変わる。

「前回うまくいったから同じ提案でいこう」が通用しない。常に顧客の課題を深掘りし、それに最適な体験を設計する思考力が求められる。

ある年末の社員総会で、「参加者が多いので会場費を抑えたい。でも盛り上げたい」というオーダーが来た。矛盾した要望に見えたが、「盛り上がり」の定義を聞き直すと「お酒がなくてもみんなが笑っている状態」だとわかった。そこで飲食費をゼロにして、その分を体験型ゲームコンテンツに集中させる提案をした。予算を下げながら顧客満足度を上げることができた。

違い③ 当日の「成功」が全て

どれだけ素晴らしい企画でも、当日のオペレーションが失敗すれば全て台無しになる。イベント営業は「売って終わり」ではなく「当日成功するまでが仕事」という責任感が必要だ。

音響トラブルで開始が15分遅れたとき、私は司会者と連携して参加者を飽きさせないアドリブのトークを挟んだ。マニュアルにない対応だったが、当日のアンケートでは「スムーズだった」という評価をいただけた。「当日の現場力」が、次の受注につながる。


他業種の営業経験がイベント営業で活きた場面

木材商社での「信頼構築力」

モノではなくコトを売るイベント営業は、顧客との信頼関係が全てだ。商社時代に培った「クイックレスポンスと誠実な対応で信頼を積む」習慣が直接活きた。

電話折り返しは1時間以内、メールは当日中。この習慣は商社時代に叩き込まれたものだったが、イベント会社に来てからも同じようにやっていた。「あの人はすぐ動いてくれる」というイメージが、担当者に安心感を与えてくれた。

営業代行での「ヒアリング力」

多様な商材を売ってきた経験から、「顧客が本当に求めているものを引き出す質問力」が身についていた。イベントの目的・ゴール・参加者に何を持ち帰ってほしいかを深掘りする面談で、この力が活きた。

多くのクライアントは「社員総会がしたい」というざっくりした要望しか持っていない。「なぜ社員総会をするのか」「社員に何を感じてほしいか」「昨年の社員総会で何が足りなかったか」を掘り下げることで、本当のニーズが見えてくる。

教育業界での「感情に寄り添う力」

保護者との面談で培った「感情的な期待に応える提案」のスキルが、「このイベントで社員に何を感じてほしいか」という感情的な要望を掴む場面で役立った。

社員総会の担当者が「社員に会社を好きになってほしい」と話してくれたとき、数字や規模の話ではなく「どんなシーンで社員が涙を流せるか」を一緒に考えた。感情をベースにした会話ができたのは、教育業界での経験があったからだと思う。


イベント会社の仕事で精神的にきつかったこと

イベントは「天候」「体調」「機材」など外部要因に大きく左右される。

雨でアウトドアイベントが中止になったとき、担当者から「また来年お願いします」と言ってもらえた。でも心の中では「1ヶ月かけた準備が全て水の泡」だという悔しさがあった。このとき「天候は操作できない。自分が操作できることに集中する」という考え方を徹底するようになった。

また、繁忙期の業務量は異常だ。年度末(3月)と年度始め(4月〜5月)が重なる時期は、掛け持ちのプロジェクトが5〜6本走ることもある。「全部自分でやろうとしない」「何を誰に任せるか」の判断力が生き死にを分ける。


イベント会社営業に向いている人

  • 毎回違う仕事・提案に刺激を感じる人
  • 「作り上げる」プロセスにやりがいを感じる人
  • 完成品のない状態でも自信を持って提案できる人
  • 当日の成功まで責任を持てる人

逆に「安定した業務をこなすことで達成感を感じる人」「ルーティンの中で積み上げていくのが好きな人」には、向いていないかもしれない。毎回一からの仕事は、刺激がある反面、積み上がりが見えにくい。


正直なデメリット

繁忙期の話を先にしておく。年度末(3月)と年度始め(4〜5月)が重なる時期は、掛け持ちのプロジェクトが5〜6本走ることもある。「今週は何日寝れるか」という会話が普通に出てくる環境だ。

また、当日のトラブルがメンタルに刺さる。機材が壊れる、担当者が遅刻する、予想外の天候変化。想定外のことが必ず起きる。「当日は何かが起きる前提で準備する」という感覚がないと、毎回ボロボロになる。

天候リスクも無視できない。屋外イベントが台風で中止になったとき、1ヶ月の準備がゼロになる。その悔しさを「仕方ない」と切り替えられるかどうかが、この業界で長く続けられるかを左右する。


まとめ:「体験を売る」営業は、営業力の本質を鍛える

イベント営業は、数字でもスペックでも説明できない「価値」を言葉と信頼で売る仕事だ。他業種での経験が活き、かつ他業種では経験できない力が身につく。

私がこの仕事をやって一番よかったのは、「完成品のない状態で人を動かす力」が身についたことだ。モノを見せずに買ってもらう。体験を語って発注をもらう。この感覚を持っていると、どの業界に行っても「提案力がある人間」として評価される。「コト売り」に興味があるなら、一度挑戦する価値は十分にある。

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※本記事は筆者の実体験をもとに作成しています。会社名・個人名・特定できる情報はすべて匿名化しています。

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4回転職した元営業マン。専門商社・電機メーカー・営業代行・塾・イベント会社で営業を経験。 失敗と成功を繰り返しながら気づいたことを包み隠さず書いています。