後輩が主任に昇格した瞬間に気づいた、「人を育てること」の本当の意味
2026-05-03 公開
「自分の数字を作るだけで精一杯なのに、後輩の面倒まで見られない」
これは20代営業マンからよく聞く本音だ。私もかつてそう思っていた一人だ。
営業代行会社でKPIを詰められながら働いていたとき、新入りの後輩が配属されてきた。最初は正直、面倒だと思った。でもその後輩が主任に昇格した瞬間、「後輩を育てた経験が自分のキャリアを大きく変えた」と気づいた。その話をする。
「後輩の世話なんてしてる場合じゃない」と思っていた頃
営業代行の仕事は、シビアだ。
毎月のKPIが細かく設定されていて、アポ件数・成約数・受注金額、それぞれに目標が課される。週次の進捗報告で「今月ここまでしかいっていないのはなぜか」と詰められる。自分の数字を作るだけで手一杯だった。
そんな環境に新入りの後輩が配属されてきた。
正直、最初は面倒だと思った。「自分のことで精一杯なのに、なんで俺が教えないといけないんだ」という気持ちが正直なところだ。
でも、その後輩がどうにも見ていられなかった。電話が怖くて手が動かない。お客さんの前で声が上ずる。クローズするタイミングがわからなくて、商談が迷子になる。かつての自分を見ているようで、放っておけなかった。
「少しだけ時間を取って、一緒にロープレしよう」
その一言が、後輩育成の始まりだった。
後輩が主任に昇格した日のこと
営業代行会社での話だ。
私は自分のKPI設計・ロープレの習慣を後輩に伝えていた。「どの顧客層で成約できていないか」を一緒に分析し、弱点を潰すためのロープレを繰り返した。業務前と業務後、合計1時間以上を後輩との練習に費やした日も多かった。
最初は全然うまくいかなかった。ロープレをしても本番になると頭が真っ白になる。私が「ここはこう言え」と教えても、実際の商談になると別人になってしまう。
「向いていないのかな」とも思った。でも継続した。
数週間後、後輩が初めて単独で契約を取ってきた。報告の電話口の声が弾んでいた。そのとき私は、不思議な達成感を感じた。自分が契約を取ったときとは違う種類の達成感だ。
数ヶ月後、その後輩が主任に昇格した。
正直に言う。そのとき、自分が昇格したとき以上の達成感があった。「自分の経験が、別の人間の成長につながった」という感覚は、数字で表せない種類のやりがいだった。
後輩を育てることで「自分が得るもの」
人を育てることは、自分への投資でもある。
得るもの①:自分のスキルが言語化される
後輩に教えようとすると、「なぜ自分は成約できるのか」を言葉にする必要がある。「なんとなくうまくいっている」では教えられない。この言語化のプロセスが、自分のスキルをさらに深める。
私はロープレを後輩と繰り返すうちに、「自分がなぜ成約できるのか」の構造が明確になった。
たとえば、自分は無意識に「相手の課題を先に言語化してから提案する」という順番でトークを組み立てていたことに気づいた。後輩に教えようとして初めて、「自分はずっとこうやっていたのか」とわかった。
この言語化が、翌月のKPI設計にも活きた。「なぜ自分が成約できているか」がわかると、「なぜ成約できていないか」も見えるようになる。
得るもの②:職務経歴書に「育成実績」が書ける
「後輩を育成し、主任昇格に貢献した」という経験は、転職市場で非常に評価される。プレイヤーからマネージャーへのキャリアアップを目指すとき、この実績が大きな武器になる。
転職市場では、「数字を作れる人材」はたくさんいる。でも「チームの数字を作れる人材」は圧倒的に少ない。マネジメント経験のある人材を求める企業からすると、「後輩を育成して昇格させた実績」は、個人の成約実績より評価されることもある。
実際に私の職務経歴書には、この経験を明記した。転職面接で「具体的にどう育てたのか」を聞かれたとき、ロープレの内容・KPIの設計方法・後輩の昇格という一連のストーリーを話せたことが評価につながった。
面接官に「それは何ヶ月での出来事ですか」「あなた自身のKPI達成はどうでしたか」と深掘りされたが、具体的な数字と経緯を話せたことで、「再現性があるスキルだ」と評価してもらえた。
得るもの③:チームで成果を出す感覚が身につく
営業は個人プレーのイメージが強い。でもチームの数字を意識して動ける人材は、マネジメント職への道が開ける。後輩育成は「自分が売る」から「チームで売る」への思考転換のきっかけになる。
「自分の数字だけ」を追いかけていると、視野が狭くなる。後輩の数字を一緒に追いかけるようになると、「チーム全体でどうすれば目標に届くか」という視点が自然に育つ。
これが、マネジメント職の本質的なスキルにつながっていく。
「後輩を育てる余裕がない」への答え
「自分の数字を作るだけで精一杯」という状況は理解できる。
でも一つだけ言う。後輩を育てるのに、まとまった時間は必要ない。
私がやっていたのはこれだけだ。
- 業務前の15分ロープレ
- 成約したときの振り返り5分
- 週1回のKPI確認
大げさな育成計画は不要。日常の隙間時間で十分できる。その積み重ねが、後輩の主任昇格につながった。
もう一つ大事なことがある。「後輩を育てる」というより「一緒に数字を作る仲間を増やす」という発想で関わると、心理的な負担が下がる。
後輩が育てば、自分が抱えていた案件を一部任せられるようになる。長期的には自分の仕事が楽になる。後輩育成は「自分の仕事を増やす行為」ではなく、「チームの生産性を高める投資」だ。
後輩育成で失敗した経験
すべてうまくいったわけではない。
一人、どうしても伸びなかった後輩がいた。ロープレをしても「そうですね」と言うだけで手応えがない。成約が取れない理由を聞くと「頑張ります」しか返ってこない。
そのとき私は、「教え方の問題か、本人の問題か」で悩んだ。
後から振り返ると、私の関わり方が一方的だったと思う。私がやってきたやり方を押し付けていた。その後輩は別のタイプの人間で、私と違う方法でしか伸びないタイプだったのかもしれない。
「育てる」ということは、相手に合わせることでもある。「自分のコピーを作る」のではなく、「相手の強みを引き出す」視点が大切だということを、失敗から学んだ。
この反省が、次の後輩育成ではうまく活きた。
まとめ:後輩育成は「相手のため」だけじゃない
後輩を育てることは、相手のためだけではない。
- 自分のスキルが言語化・深化される
- 転職市場での評価が上がる
- マネジメント職への道が開ける
「後輩育成を避ける20代」と「後輩育成を経験する20代」では、30代以降のキャリアに大きな差が出る。今の環境に後輩がいるなら、積極的に関わることをおすすめする。
その経験が、次の転職でも必ず武器になる。
後輩が昇格した瞬間の達成感は、個人の成約を超えた何かだった。あの感覚を知ってしまうと、「自分の数字だけ追いかけていた頃」には戻れない。
マネジメント職へのキャリアアップも、エージェントに相談できます
「育成実績をどう職務経歴書に書けばいいか」も一緒に考えてもらえます。
※本記事は筆者の実体験をもとに作成しています。会社名・個人名・特定できる地名はすべて匿名化しています。
