営業マンの転職図鑑
商社営業のリアル【木材商社で3年働いた経験者が語る仕事内容・年収・向き不向き】
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商社営業のリアル【木材商社で3年働いた経験者が語る仕事内容・年収・向き不向き】

2026-03-06 公開

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4回転職した元営業マン。専門商社・電機メーカー・営業代行・塾・イベント会社で営業を経験。 失敗と成功を繰り返しながら気づいたことを包み隠さず書いています。

入社した最初の週、先輩に連れられて工務店の社長を訪問した。

木材の匂いが漂う作業場で、60代のベテラン職人が私をじろりと見て、一言言った。「また若いのが来たか。3年は黙って付いてこい」。

営業なのに黙れと言われる。これが商社営業の洗礼だった。「商社ってなんかかっこいい響き」というイメージは、この一言で完全に砕けた。木材を扱う専門商社で約3年働いた経験から、商社営業のリアルを包み隠さず話す。

商社営業の仕事内容

私がいた専門商社は木材を専門に扱っていた。仕事は大きく3つに分かれる。

① 既存顧客フォロー

定期的に顧客(工務店・建設会社など)を訪問し、在庫状況の確認・新商品の案内・発注の受付を行う。関係性が売上を左右するため、信頼構築が最重要だ。

顧客の担当者が変わったり、他社と価格を比べられたりすることも多い。「顔を覚えてもらうまで何も始まらない」という感覚は、他の営業とは異なる独特のものだった。

② 新規開拓

財務内容を調査した上でアポイントを取り、新規顧客への営業を行う。商社の場合、与信管理(支払い能力の確認)も営業の仕事のうちだ。

新規と言っても、飛び込みで雑居ビルのベルを押すような新規ではない。地域の工務店リストや建設会社データベースから候補を絞り込み、電話でアポを取ってから訪問する。それでも「うちはもう仕入れ先が決まってる」と断られることは日常茶飯事だった。

③ 事務・物流業務

仕入入力・売上入力・与信管理・フォークリフトでの倉庫作業など、営業以外の業務も幅広くこなす必要がある。「泥臭い仕事ができるか」が商社営業の試金石だ。

これは入社前に全く想定していなかった。大卒の営業職として入社したのに、週に何度か倉庫でフォークリフトに乗って木材を移動させる日があった。「これも仕事のうちか」と最初は戸惑ったが、倉庫作業を経験することで「どの木材がどこに何本ある」というのが身体で理解できるようになった。これが顧客への提案スピードに直結した。

商社営業のリアルな年収感

商社は業界・規模によって年収の幅が大きい。専門商社(特定商材に特化)と総合商社では全く違う。

種類年収の目安(一般的な水準)
大手総合商社600万〜1,500万円以上
中堅専門商社300万〜550万円
中小専門商社250万〜400万円

私がいたのは中堅の専門商社だったので、年収は業界全体の平均的なレンジだった。「商社=高年収」のイメージは大手総合商社に限った話で、専門商社は必ずしもそうではない。

年収の伸び方

専門商社での年収は、成果よりも年次で決まることが多かった。インセンティブが設定されている会社もあるが、基本給ベースの年収テーブルが主流だ。「成績が良ければガンガン稼げる」という感覚は薄い。代わりに「関係性を積み上げれば受注が安定する」という安定感がある。

短期間で年収を上げたい人には物足りないかもしれないが、腰を据えて特定業界のエキスパートになりたい人には向いている環境だ。

商社営業ならではのきつさ

① 顧客が「年配のプロ」で最初は相手にされない

木材業界の顧客は職人や建設業のベテランが多い。若手営業マンが行っても「若造には任せられない」という雰囲気がある。信頼を積み上げるまでの期間が長く、最初は本当に辛い。

私が担当した工務店の親方は、最初の半年間ほぼ話を聞いてくれなかった。訪問のたびに事務所の隅に座らせてもらい、ひたすら雑談だけをした。7ヶ月目にようやく「そういえば来月、杉板が要るんだが」と声をかけてもらえた。あの瞬間の嬉しさは今でも覚えている。

② 商品差別化が難しく価格競争になりやすい

同じメーカーの同じ商品を複数の商社が売っているため、「価格で負けたら終わり」という状況が多い。価格以外の価値を作ることが求められる。

私が工夫したのは「レスポンスの速さ」だ。在庫確認の連絡を他社より1時間でも早く返す。急ぎの案件には即日対応する。「あそこに電話すれば早い」という評判が少しずつ広がると、価格を少し上げても選んでもらえるようになっていった。

③ クレームが多い

木材は「生きている素材」なので品質にムラがある。検品をしても届いた商品にクレームが入ることは珍しくない。クレーム対応のスピードと誠実さが、商社営業の真の差別化ポイントになる。

特に梅雨の時期は、湿気による反りや歪みのクレームが増える。一度は現場で大工さんに「使えない材料を送ってきた」と怒鳴られたこともある。謝り続けながら代替品を手配し、翌日中に届けた。その後、その大工さんはよく声をかけてくれるようになった。「クレームはチャンス」という言葉を実感した瞬間だった。

商社営業ならではのやりがい

きつさばかり書いてしまったが、商社営業には他の業種では味わいにくい充実感もある。

業界の「動き」が分かる

木材商社で働いていると、住宅着工件数の増減・建材価格の上下・外国産材の輸入状況など、マクロな業界トレンドが肌感覚でわかるようになる。顧客との会話だけで、経済の動きが見えてくる感覚は、企業営業ではなかなか得られない。

「特定業界のプロ」になれる

木材という特定商材に3年携わると、材種・用途・価格帯・仕入れルートまで体系的な知識が積み上がる。「木材のことならあの人に聞け」という存在になれると、顧客だけでなく社内でも頼られるポジションになれる。

商社営業に向いている人

  • 長期的な関係構築が好きな人
  • 泥臭い仕事を厭わない人
  • クレームをチャンスと捉えられるメンタルの持ち主
  • 特定の業界・商材に深い知識を持ちたい人
  • 「じっくり信頼を積み上げる」ことにやりがいを感じる人

商社営業に向いていない人

反対に、こういうタイプには合わないことが多い。

  • 短期間でガンガン稼ぎたい人
  • 毎日変化があった方が楽しいと感じる人
  • 「商品力」より「関係性」で売ることに抵抗がある人
  • 汚れたり重いものを運んだりする仕事が嫌いな人

まとめ

商社営業は「華やかさ」よりも「泥臭さ」と「信頼の積み上げ」が本質の仕事だ。特に専門商社は、大手総合商社とは全く異なる働き方になる。

転職前に確認してほしいのは「商社の種類(総合か専門か)」と「顧客層・営業スタイル」の2点だ。この2つを把握するだけで、入社後のギャップを大きく減らせる。

あの工務店の親方から7ヶ月後に初めて声をかけてもらったとき、「この仕事って、人と人だな」と思った。商品は同じでも、人で選ばれる営業になれる。それが商社営業の本質だと思っている。

ただし、これを実感するには時間がかかる。最初の半年は「自分は何をしているんだろう」と感じることが必ずある。それでも続けられる人間が、商社営業で本物の力をつける。「じっくり積み上げることに苦痛を感じない」人にとっては、これほど良い訓練の場はない。


※本記事は筆者の実体験をもとに作成しています。会社名・個人名・特定できる情報はすべて匿名化しています。

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4回転職した元営業マン。専門商社・電機メーカー・営業代行・塾・イベント会社で営業を経験。 失敗と成功を繰り返しながら気づいたことを包み隠さず書いています。