2026年、営業の採用は「即戦力」に振れたのか——dodaのデータを業界別に見たら話が違った
2026-09-05 公開
※本記事にはプロモーション(アフィリエイト広告)が含まれます
この記事はこんな人向け
- 3回、4回と転職を重ねてきて「回数の多さ」を負い目に感じている人
- 「即戦力採用が増えている」という話を聞いて、自分に当てはまるのか知りたい人
- 2026年の営業職の転職市場が実際どう動いているのか知りたい人
このブログでは以前、「未経験歓迎」求人に飛びつくと痛い目を見るという記事を書いた。最初の転職活動のとき、私自身がその言葉に引き寄せられた一人だったからだ。
その一方で、最近は「もう未経験歓迎の時代ではない、これからは即戦力採用だ」という論調も見かけるようになった。4回転職してきた私からすると、これは他人事ではない。本当にそうなら、経験者にとっては追い風のはずだ。
そこで、パーソルキャリアが発行している「doda転職求人倍率レポート」を実際に何本か読んでみた。結論から言うと、「営業職の採用が未経験から経験者へ転換した」と言い切れる根拠は、少なくとも私が確認した範囲では見つからなかった。むしろ業界ごとに、正反対の動きが同時に起きていた。
この記事では、その中身を正確に切り分けたうえで、経験者が本当に見るべきものは何なのかを、忖度なしで書いてみたい。
「即戦力シフト」の出どころを確認したら、人材サービス業界の話だった
「即戦力採用へのシフト」の根拠としてよく引かれるのが、次の記述だ。
「採用ターゲットの見直しも進んでいます。若手・未経験層を含めた採用から、即戦力となる営業経験者を軸とした採用へとシフトする動きが強まっており」 (出典:doda転職求人倍率レポート(2026年4月30日発行版・対象期間2026年1〜3月))
たしかにそう書いてある。ただ、レポートを開いて前後を読むと、これは2026年3月の「業種別」解説のうち、「人材サービス」業種について述べた箇所だった。アウトソーシング企業や転職サービスを提供する企業で法人営業職の採用が目立った、という文脈の中の一文だ。
つまりこれは、日本の営業職全体が転換したことを示す調査結果ではない。ひとつの業種の、ある四半期の動きの解説である。
理由についても、レポートは推測を書いていない。同レポートが挙げているのは「今後の新卒採用を見据え、育成やマネジメントを担える層の確保を重視する姿勢」というものだ。「企業に未経験者を育てる余裕がなくなった」「育成コストを避けている」といった説明は、私が確認した限りレポートには書かれていない。よく見かける説明だが、出典を伴わない推測として扱うべきだと思う。
同じdodaのレポートに、逆向きの記述もあった
さらに調べると、話はもっと単純ではなかった。
同じくdodaが2026年6月24日に発行した不動産業界のレポート(対象期間:2026年3〜5月)には、こう書かれている。
「完全未経験者や異業種における営業・接客経験者を対象とした求人が増加している」 (出典:doda転職求人倍率レポート 不動産業界(2026年6月発行版))
人材サービスでは経験者を軸にする動きが強まり、不動産では未経験者や異業種の営業経験者に門戸が広がっている。同じ時期に、業界によって逆を向いているわけだ。
年齢層でも切り口は変わる。4月版レポートの「実務経験や保有資格、業務の再現性を重視する採用判断が一般化しつつあります」という記述も、よく引用されるが、これは関西エリアのミドル・シニア層(社会人歴18年以上)について、メーカー・エネルギー・建設・不動産業界を中心に述べた箇所だ。20代の営業職に、そのまま当てはめられる話ではない。
ここから言えるのは、「営業職の採用はこう変わった」という一文で市場全体をまとめること自体に無理がある、ということだ。
全国レベルで言えるのは「厳選採用」までだと思う
では、全国レベルで確認できることは何もないのか。ひとつだけあった。
2026年7月31日発行版(対象期間:2026年4〜6月)では、全国の動きとして次のように説明されている。
「企業による厳選採用が強化されている傾向」「企業はより高い専門性や即戦力性を重視するようになっているなど、採用要件に合致した人材をこれまで以上に慎重に見極める動きが見られます」 (出典:doda転職求人倍率レポート(2026年7月発行版))
背景としては「AIの進展などに伴い経営環境が大きく変化する中」という表現が使われている。
ここも慎重に扱いたい。この7月版の記述は、4月版の人材サービス業界と同じ動きが全国に広がったことを証明するものではない。4月版は人材サービス業種の営業経験者についての解説、7月版は全国・全職種の採用姿勢についての解説で、そもそも見ている対象が違う。ただ、全国レベルでも専門性・即戦力性を重視する厳選採用が報告された、という別の事実は押さえておきたい。
そしてこれは「未経験採用がなくなった」ではなく「要件に合うかどうかを慎重に見るようになった」という話だ。ここも混同したくない。
求人倍率の数字は、この話の証明にはならない
数字の扱いにも注意がいる。dodaは職種別の求人倍率も公表していて、営業職の倍率は2026年に入って次のように推移している。
| 2026年 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 営業職の求人倍率 | 2.88倍 | 2.69倍 | 2.72倍 | 2.73倍 | 2.75倍 | 2.85倍 | 3.04倍 |
(出典:doda転職求人倍率レポート(データ)職種別・2026年8月20日発表時点)
2月の2.69倍を底に、7月には3.04倍まで上がっている。営業職ひとりに対して3件の求人がある計算で、数字だけ見れば求職者にとって悪い環境ではない。
ただし、ここには2つの但し書きがいる。
①これは公的統計ではない。 doda転職求人倍率は、dodaの求人数(採用予定人員)を、dodaの会員である転職希望者数で割った、同社独自の定義による数字だ(出典:同上)。「doda上で観測される転職市場では高い水準にある」とは言えるが、「日本の中途採用市場全体が」とは言えない。私も最初これを混同しかけた。加えて、転職希望者の職種は希望職種ではなく直近の仕事の職種で分類されている。「営業職の倍率」は「営業から転職したい人」を分母にした数字であって、「営業職を目指す人」の数字ではない。
②倍率が上がっていることは、経験者採用へのシフトを何も証明しない。 倍率は求人と求職者の需給を示す数字であって、企業が誰を採りたいかを示す数字ではない。この2つを足し算して「求人が増えている、だから経験者が有利だ」と結論づけるのは、方法として成り立たない。実際、倍率が上がっている同じ期間に、不動産業界では未経験者向けの求人が増えているとされていたわけだ。
5業界を回って感じた、「採用の目線」は業界ごとに違うということ
ここまでデータの話をしてきたが、業界ごとに逆を向いているという結論は、正直なところ私の実感とも合っている。
私は木材商社・電機メーカー・営業代行・塾・イベント会社と、5つの業界で営業をしてきた。転職のたびに感じたのは、評価される「経験」の中身が業界ごとにまるで違うということだ。
木材商社で身につけたのは、顧客と長期的な信頼関係を築く営業だった。電機メーカーでは、スペックや数字で説得する技術的な営業を経験した。営業代行から教育業界に移ったときは、「訪問型の短期成約営業から、長期信頼型の営業に変えたい」という軸で会社を選んだ。同じ「営業経験者」という言葉でも、どの業界に持ち込むかで、価値の出方がまったく変わる。
だから「市場全体が経験者に振れているらしい」という話を、自分の追い風だと単純に受け取るのは危ういと思っている。見るべきなのは市場全体ではなく、自分が狙う業界が今どちらを向いているかだ。人材サービスを狙うのか、不動産を狙うのかで、経験者であることの意味が変わってくる。
経験者側が、それでもやっておくといいこと
市場の読み方が定まったところで、では何をするか。私が考えるのは3つある。
①「回数」ではなく「再現性」で語り直す
これはdodaのデータから導いた話ではなく、私自身の実体験からの結論だ。
3回目の転職活動のとき、面接官から「転職回数が多いですね。うちに来てもすぐに辞めてしまうのではないかと心配なのですが」と言われたことがある。そのとき私は「各社での経験を通じて、業界が変わっても通用する営業力を身につけてきました。それがあるからこそ、御社でも即戦力として貢献できると確信しています」と答えた。
このやり取りが手応えになったのは、回数の言い訳をしなかったからだと思っている。違う環境でも成果を出せた理由を説明できたかどうか。そこが分かれ目だった。面接での具体的な切り返し方は転職回数が多いと不利?4回転職した私が面接で言われたこととその切り返し方に詳しく書いたので、そちらを読んでほしい。
職務経歴書の段階で、この「再現性」が伝わる書き方になっているかも見直す価値がある。数字での実績の書き方は4回転職してわかった、職務経歴書で営業職が絶対に書くべきことにまとめている。
②業界をまたいだ経験を「材料」として棚卸しする
バラバラに見える経歴でも、「有形と無形」「法人と個人」という軸で整理すると、どの業界でも共通して機能した営業の型が見えてくる。この棚卸しの詳細はAI時代に「なくならない営業」とは?と5業界を渡り歩いた営業マンが正直にランキングする「一番きつかった業界」に書いた。
ひとつ正直に付け加えておくと、転職回数が多いこと自体は、適応してきた証明にはならない。短期離職を繰り返しただけでも回数は増えるからだ。それぞれの職場で何を残し、なぜ成果が出たのかを説明できて初めて、「複数の環境に適応してきた経験」として提示できる。
③「何を再現できるか」を面接で先に示す
私が4回目の転職面接で学んだのは、「転職回数が多いですね」と聞かれる前に、自分から「各社での経験で、業界が変わっても通用する営業スタイルが身につきました」と話し始めると、相手の反応が変わるということだった。
ただ、「私は即戦力です」と自称するだけでは弱い。企業が知りたいのは、入社後に何を再現してくれるのかという一点だ。前職で成果が出た理由を分解して、それが応募先でも機能する理由まで自分の言葉で言えるか。今の「厳選採用」の空気の中では、そこまで用意しているかどうかで差がつくと思う。
まとめ
- 「即戦力となる営業経験者を軸とした採用へシフト」というdodaの記述は、人材サービス業種についての解説であり、営業職全体の転換を示した調査結果ではない
- 同じdodaの不動産業界レポート(2026年6月発行)では、逆に「完全未経験者や異業種の営業・接客経験者を対象とした求人が増加」とされている。業界によって動きは逆を向いている
- よく引かれる「業務の再現性を重視」も、関西エリアのミドル・シニア層(社会人歴18年以上)についての記述で、20代営業職の話ではない
- 全国レベルで確認できるのは、2026年7月発行版の「厳選採用の強化」「専門性・即戦力性を重視し、要件に合うかを慎重に見極める」まで
- doda上の営業職求人倍率は2026年2月の2.69倍から7月の3.04倍まで上昇しているが、これは公的統計ではなく同社会員ベースの独自数字であり、そもそも需給の指標なので経験者シフトの証明にはならない
- 経験者がやるべきは、市場全体の空気を読むことではなく、狙う業界がどちらを向いているかを見たうえで、再現性を語れるように準備すること
「未経験歓迎の時代は終わった」という言い切りは、聞くと少し気持ちがいい。経験を積んできた側からすれば、なおさらだ。
でも実際にレポートを開いてみたら、そこにあったのは業種別・エリア別・年齢層別のバラバラな動きだった。市場をひとことでまとめた話を鵜呑みにするより、自分が受ける会社が誰を欲しがっているかを調べるほうが、たぶんずっと転職の役に立つ。
※本記事は筆者の実体験をもとに作成しています。会社名・個人名・特定できる情報はすべて匿名化しています。
